2024/11/14
トランプ大統領時代に加速する、泌尿器科領域でのAI利用│いわさ泌尿器科(越谷・春日部)
アメリカ大統領選では、日本マスメディアのおおかたの予想を覆してトランプ氏が圧勝しました。結果に対して、さまざまな意見や感情があるでしょうが、あの国民の目の前で国民の選択が闘われる様子に、日本では経験できない政治のエネルギーのようなものを感じました。
トランプ氏当選にあたり、未来の泌尿器科の医療はどういう影響を受けるかについて、考えてみました。
泌尿器科の革新的な治療機器には、米国発が多い
日本の医療で使用する革新的な医療機器は、米国で開発されたものが多いです。例えば、お腹や胸を開けない手術を可能にした、手術支援ロボットの「ダヴィンチ手術システム」は、米国企業により開発されました。数ある診療科の中でも泌尿器科はダヴィンチ手術システムを3番目に用いたことで知られています。対象は前立腺手術でした。このシステムは、身体への負担が少ない手術を可能とし、手術の精度と安全性を向上させることが報告されています。
最近では、米国で開発されたAQUABEAMロボットシステムが昨年日本で承認され、前立腺肥大症の保険適応になりました。前立腺肥大症による、下部尿路症状を有する男性の前立腺組織の切除、および除去を目的とした医療機器です。このシステムは、超音波で前立腺をリアルタイムに観察しながら、切除範囲をプログラムして自動的にジェット水流により切除します。電気メスやレーザーを使用しないため、熱による周辺組織へのダメージが軽減され、切除時間が5~10分と短いため出血量も軽減されるなどのメリットがあります。
トランプ前政権のAI重視
トランプ次期大統領は、前大統領時代に、「人工知能(AI)における米国のリーダーシップの維持」に関する大統領令を発出し、米国AIイニシアチブ(American AI Initiative)を開始しました(2019年2月)。第2次トランプ政権も、AIを重視すると予想されます。医療においても、AIを利用した診断や治療の研究開発が促進され、実装への投資も活発になるでしょう。大規模言語モデルのChatGPTを実用化して世界に広めた米国のAIパワーは、さらに増してきそうです。
第2次トランプ政権下で進むと予想される泌尿器科におけるAIの活用
米国における泌尿器科医療分野では、AIの活用が急速に進展しています。
もっとも進んでいるのは画像解析の分野です。AIを用いた前立腺MRI画像や内視鏡画像の解析により、がんの早期発見や診断精度の向上が図られています。また、AIを活用して病理画像を解析し、がんの再発リスクを高精度に評価するシステムが開発されています。
治療では、先述したロボット支援手術の最適化にAIを利用する研究が進んでいます。 手術中の映像やデータをAIで解析し、術者にリアルタイムでフィードバックを提供するシステムの開発です。これにより、手術の精度向上や合併症の減少が期待されています。
また、AIを活用して、前立腺がんの放射線治療計画を最適化する研究が行われています。これにより、正常組織への被曝を最小限に抑えつつ、効果的を上げることが追求されています。
第2次トランプ政権下では、このような研究段階の医療用AIや、一部の高度施設で使用されている医療用AIが、一般臨床に実装され、普及していく勢いが高まりそうです。
これからは医療用AIの進歩と社会実装を注視したい
AIはすでに医療現場に入り込んでいます。画像診断だけではなく、カルテの記載時もAIを使ったツールが導入され始めています。ある病院では、医師が生成AIを使って診断に活用している例もあります。
AIが医療に導入されるためには、今までの診断、手術結果をデータベースに集約する必要があります。今はデータ収集の段階が多く、本格的にAI活用した医療を皆さんが享受するには少しタイムラグが生まれてしまうと思います。
しかし、対患者様の診察の現場で、AIのみで処理できるかというとまだまだ難しいというのが実情です。目の前の患者さんの訴え、症状、検査結果などを総合的に判断することで、最適な診断ができると考えています。まずは患者さんの話を聞くことが一番重要だと私は考えています。AIがサポートしてくれますが、まだ人間による医療が必要であると考えています。日進月歩の世界ではあるので、しっかりと情報収集し続けたいと思います。
トランプ大統領の出現により、日本経済、日本医療は少なからず影響を受けると考えています。この変革の時代を経験することは刺激的ではありますが、穏やかな日常を送れることが希望ですね。